ベビメタ七転八倒

ベビメタにハマってからの紆余曲折を記録してみる

髪を直すということ

これはさくら学院での話だったか、その前の可憐Girl’sに遡る話だったか記憶が曖昧なのですが、「舞台でのパフォーマンス中に髪を直してはいけない。なぜなら髪を直すという振り付けは曲の中にないから」というMIKIKO師の教えがありました。これはBABYMETALにも綿々と受け継がれていて、彼女達のパフォーマンスが観る者をなぜこれほど感動させるのか、その本質を探る上での重要な鍵の一つとして捉えられてきたと思います。

最近のステージで印象的だった、というよりも衝撃的だったのは、サマソニ東京のステージでした。たしかヘドバンギャーだったと思うのですが、曲の途中でスクリーンに大写しになったSU-METALの顔全面を汗で濡れた髪が覆っているにもかかわらず、彼女は微動だにせず歌い続けるというシーンがありました。これには私の周囲からもどよめきが起こり、今年のBABYMETALに対する彼女の覚悟を象徴するような瞬間であったと思います。

さて、この数日はオーランドとアトランタのファンカムを片っ端から見続けており、そこで起きている洪水のような出来事を咀嚼するのに嬉しい悲鳴を上げています。その中で注目したことの一つが、この髪を直すことについてでした。

昨晩からアトランタの素晴らしく高音質高画質のファンカムがアップされ始め、あたかも自分も現場にいるような臨場感に浸っていたのですが、そこでふと目に止まったのが、曲中で髪を手で払う鞘師の姿です。それも一度だけではなく、おおよそ一曲に一回はそうする様子が映像に捉えられている。自分の知る限り、BABYMETALの9年の歴史で初めての出来事です。

これが米国ツアーが始まる前に起きたことであれば、自分は大きな違和感を感じたものと思います。実は、最近熱中している鞘師研究でモーニング娘。のライブ映像を多数見ている中で、どうしても気になるのがメンバーの多くがステージで歌いながら髪を手で払っていることでした。さくら学院〜BABYMETALの系譜とハロプロとの本質的な違いがそこに象徴的に表れているとさえ自分は思っていたのです。

しかし、アトランタの鞘師を見て自分は否定的な印象を受けませんでした。その理由は、今回の米国ツアーにおいてBABYMETALは重要な飛躍を見せていると自分が考えていることと関係しています。

Twitterでも呟きましたが、今回の神バンド総入れ替えについて、私は全面的に肯定的に受け止めています。その理由は、演奏の水準が十二分に高いことに加えて、新体制がこれまでのBABYMETALとは不連続な世界を見せてくれていることにあります。

2013年2月の Legend “Z” から6年半もの長きにわたり、大村、Leda、青山、BOH、藤岡の各氏を中心とした神バンドは、フロント3人の成長と歩調を合わせながら、その演奏を進化させてきました。その一つの到達点が2017年12月の Legend S であり、最新が最高という意味において今年8月のサマソニであり、そして更に今後も進化していくものと思います。

この神バンドの素晴らしさについてはここで改めて語る必要などまったくありません。ただ、その上で敢えて言うのですが、そのあまりの緻密な完璧さのために、どうしても予定調和的な感じが微かに漂ってくる。BABYMETALのステージは、ライブと呼ぶよりもショーと表現する方がしっくりする。そんな印象をこのところ持っていました。

ところが、そこに現れ出たのがオーランドでの新体制です。初顔合わせであるがための緊張感やぎこちなさを差し引いたとしても、なんとも(良い意味で)不穏な、ステージ上でのパフォーマンスに予断を許さないようなエネルギーが湧き出ている。その変化をフロント3人は当然に感じ取り、2日後のアトランタにつながっていったのではないかと思います。

アトランタで最初に気付いたのは鞘師が髪に手をやる姿ですが、SU-METALも最近の「完璧さ」の殻を敢えて破っているように見えるし、MOAの弾け具合もこれまでを上回っている。これはもう、あらかじめ計算されたショーなどではなく、全力を尽くした先に何があるか本人達もわからない、究極のライブパフォーマンスに進化したものだと思うのです。

アトランタのステージ上で髪を手で払う鞘師を見ても違和感を感じなかった理由。それはステージパフォーマンス全体のこうした進化によるものでした。次の瞬間に全力で挑むためであれば、髪を直そうが直すまいが構わない。それだけ高次元の世界を我々は目撃し始めているのだと私は考えています。

マンガヒロインと中元・鞘師

BABYMETALの物語はマンガを超えている、あまりにもドラマチック過ぎてマンガなら絶対に編集者からボツにされるレベルだ、などとよく言われますね。そういう声を聞くたびに自分が思い出すマンガがあります。

曽田正人作の「昴(すばる)」という作品で、小学校低学年でバレエを始めた主人公・宮本すばるが日本から飛び出て世界で認められ、果てはパリ・オペラ座バレエ団のエトワール(最高位)に登りつめるまでを描いています。

この作品には随所に中元すず香がダブって見える箇所があるので、ここでは二つ紹介してみます。

一つ目は、宮本すばるにとってバレエが命懸けであることです。彼女には双子の弟がいたのですが、脳腫瘍で入院生活を送っていました。日に日に意識が薄れていく弟は言葉での意思疎通ができなくなる。そこですばるは、弟の表情からほんのわずかでも反応を得るために、毎晩病室で何時間も踊り続けたのでした。彼女にとって弟と心を通わせる唯一の方法が自分の踊りだった。弟はその後亡くなりますが、これが大きな原体験となって、自分からバレエを取ったら何も残らない、バレエを突き詰めるためには自分の生命の危険も厭わないという、強烈な生き方をする少女に宮本すばるはなっていきます。

一方、我らが中元すず香には、私から歌を取ったら何も残らないという有名な言葉がありますね。彼女に宮本すばるのような壮絶な経験があるとは思えません。しかし、ライブであれだけのパフォーマンスをし続ける、しかも可憐Girl’sが始まった10歳の頃から現在に至る11年の間にステージ上で緊張感とエネルギーを緩ませたことがおそらく一度もないというのは、どう考えても尋常ではありません。理由はなんであれ、人並み外れた決意を持って彼女が舞台人生を生きていることは確かです。

さて、宮本すばると中元すず香が重なって見えるもう一つの箇所についてです。宮本すばるは国際コンクールで最高位の賞を得たのち、ヨーロッパの名門バレエ団の養成学校に入学する機会を捨てて、ニューヨークにある無名のバレエ団に参加します。その彼女に目を留めたのが世界屈指のバレリーナであるプリシラ・ロバーツという人物。そして偶然にも宮本すばるとプリシラ・ロバーツは、同じニューヨークにおいて同じ日程で、モダンバレエの最高傑作である「ボレロ」をそれぞれが所属するバレエ団の公演で踊ることになりました。

迎えた公演初日、プリシラ・ロバーツのステージが観客に極度の緊張を強いる特異なパフォーマンスだったことを聞いた宮本すばるは、「私が皆んなを連れて行く!」と叫びます。すなわち、自分は観客に何かを無理矢理に受け取らせるのではなく、劇場にいる観客全員をどこか別世界に自分と一緒に連れて行くのだと宣言したのです。

このシーンも私には中元すず香が重なって見えます。東京ドームのステージに立ったもののここがゴールではないとわかったと語る彼女。そして、すべてのステージで観客をかつてない世界に導くことが自分の責務だと言い切る彼女。自分自身に極めて高い目標を課し、それをクリアするために観客に向けて恐るべき熱量で演じる姿が、宮本すばるとまったく同じなのです。

他にも書きたいシーンが色々あるのですが、キリがないので話を先に進めます。

自分がBABYMETALにハマって以来、このように宮本すばると中元すず香の共通点について考えてきたのですが、このところ毎日研究を重ねている鞘師里保にも宮本すばると重なる点がいくつもあることに気づきました。

中学生になった宮本すばるは日本有数のバレエ演出家の目に留まり、「白鳥の湖」の群舞メンバーに抜擢されます。初回の練習では要領がつかめず苦労したものの、あるきっかけで勘所を掴むと他のベテランバレリーナをグングン引っ張り始めます。全員が宮本すばるの一挙手一投足に影響され、いつもより格段に強く大きく踊ることを強いられる。その日の練習が終わる頃には彼女以外の全員が疲労困憊して倒れ込んでしまうのでした。

この話が鞘師里保とどう関係するのでしょうか。

今年3月に鞘師が出演したハロプロのイベント、ひなフェスでの Only you と One・Two・Three のメドレー動画を何度も繰り返し見ているのですが、これは本当に素晴らしいパフォーマンスだと思います。モー娘の現役メンバーと鞘師の歌とダンスが緊密に連携して、非常にタイトでエネルギッシュなステージになっている。

一方、現在のメンバー(モーニング娘。19)だけでのパフォーマンスはどうかと見てみると、印象がまったく違います。メンバー各自の個性が様々に出ていて賑やかで楽しい感じではあるのですが、歌とダンスに全員を貫く芯が通っておらず、タイミングの取り方が各自バラバラなために、雑然としてしまっていると自分には感じられます。

わずかではありますが自分も歌や楽器の演奏をしたり、プロダンサーになった友人の踊りを間近で見たりした経験から、一流のパフォーマーにはある共通した能力があると私は考えています。それは、拍のタイミングを常に正確に(あるいはわずかに早く)取ることによって、音楽やダンスをみずから引っ張っていく能力です。バックの音源や周囲の演者の動きに受動的に合わせていると、自分の歌やダンスは微妙に遅れていきます。そうではなく、自分の体の中にリズムやテンポを生み出す動力源を持つことによって、正確かつ前へ前へとダイナミックに前進する表現が可能になるのだと考えています。

2012年頃から最近までのモー娘のステージ映像を手当たり次第に見ていますが、メンバーの大半は周囲に合わせるパフォーマンスをしていて、歌やダンスの動きが遅れ目になったり、遅れたり早くなったり安定しない様子が見て取れます。その中で道重さゆみは拍の取り方がとても正確ですが、周囲を引っ張るほどの牽引力にはなっていないように見受けられます。

一方、鞘師里保はというと、歌もダンスも正確無比であるのに加え、拍をピンポイントで刻むその一瞬前から全身でその準備をしている気配を周囲に強く発散している。そのために、他のメンバーは鞘師が発信する「気」に否応なく巻き込まれ、結果としてレベルの高いステージが実現されたのだと思うのです。

ずいぶん話が長くなってしまいました。結局何が言いたいかというと、世界レベルで観客に感動を与えるステージパフォーマンスには普遍的に重要な共通要素があって、中元すず香鞘師里保といった人達は現実世界でそれを体現しているのだと自分は思います。次はどんな「マンガ並み」や「マンガ超え」の姿を見せてくれるのか、とても楽しみです。

 

SU-METAL仮想体験

巷に衝撃が走ったあの流出音源。毎晩繰り返し聴いています。Shanti! そして Starlight !!

自分はノイズキャンセリングイヤホンで聴いているのですが、頭の中でSUの声が鳴っているというよりも、あたかも自分がSU-METALになって1万人の観客に向き合っているような気持ちになる。いわばベビメタVR体験!!!

観客の歓声 → “1, 2, 1 2 3 4” のカウント → バンドの音がスタート → MOAの “Shanti Shanti” の声 → そして自分の歌い出し。出だしこそ若干の緊張感と慎重さが表れるものの、「舞上がれよカルマ」あたりからどんどん曲に入り込んでいく。ステージでこのように歌えたら、さぞ気持ちがいいことでしょう。

あの音源はそもそもなんの音なのか、SUのイヤモニに送られている音にしては本人の声が大きすぎるのではないかとの意見もありますね。最初は自分も「これはいくらなんでも変だろう」と思ったので、試しに自分も合せて歌ってみました(夜中の自宅なので小声ですが… しかもちょっと恥ずかしい…)。

すると、あのボーカルのボリュームでも全然大き過ぎる感じがしないのです。自分の体を伝わって直接耳に伝わってくる自分の生の声と、イヤホンから入ってくる声が音を打ち消し合う。外に聴こえている声をチェックしながら自分の発声をコントロールするのにちょうど良いバランスが取れるような気がします。

いやいやこれは! 私ごときがこんなことを言っては大変おこがましいのですが、自分が SU-METAL になって歌っている気分がここまで味わえるとは! 皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか。自分は声が低いのでSUより2オクターブくらい下になるのですが、それでも十分に臨場感を味わえます。

あと、あの音源を聴いていて感じたのが、音のミックスの中でギターの音が大きめに出ていること。Starlightは公式のスタジオ録音でもDNCデロでも、全体の音が分厚いためにギターの細かい部分を聴き取ることがなかなかできません。それが今回の音源では手に取るように生々しく聴こえてきます。

かつてのギター雑誌のインタビューでSUが「ギターを頼りにメロディーを歌うことが多い」と語っていましたが、この音源でそれが裏打ちされているのではないでしょうか。いやあ、本当に凄いものが出てきたものです・・・。

マイクを持つ姿

いきなりですが、すぅさんのマイクの持ち方って素敵だと思いませんか? 自分は以前から気になっていて、ついつい彼女がマイクを持つ左手に目を奪われてしまうのです。

おそらく関節がとても柔らかいからできるのだと思いますが、手首を深く曲げてマイクを真下から支える。そうすることでマイクを筋力で支えるのでなく、骨格で支えることで安定が増すようです。親指の置き方も独特で、自分にはああいう持ち方は絶対できません。そして、口とマイクの距離と角度が常にほぼ変わらない。そのために歌う声をマイクにストレートに均質に伝え続けることができているように見えます。

こんなすぅさんマイクフェチの私が気づいたことがあります。それは、鞘師里保のマイクの持ち方が凄いということ。

このところ毎日鞘師の動画を見てにわか研究を続けているのですが、彼女が持つマイクの位置、すなわち口との距離や頭の上下左右の動きに対する角度が常にまったく変わらないのです。モー娘の他のメンバーと比べてもその差は歴然としている。小田さくら道重さゆみはかなり高レベルだと思いますが、鞘師の方が精度がずっと高いのです。

ダンスの能力が高いとマイクもしっかり持てるのか、歌のパフォーマンスを追求するとあの持ち方に辿り着くのか。素人の自分には良くわかりませんが、どうやら自分が良いと思うパフォーマーはマイクの持ち方も凄いという相関関係があるようです。

マイクの持ち方研究がだんだん面白くなってきたので、次にさくら学院を見てみます。最近出た2018年度卒業公演の映像をじっくり観察しました。すると、麻生真彩と新谷ゆづみのマイク姿が驚くほど高水準ではないですか! 日高麻鈴もかなり良い感じです。自分は2018年度のさくら学院が2012年度と並んで史上最高水準だと思っているのですが、まさかマイクの持ち方でもそれが裏打ちされるとは思いもよりませんでした。

比較のために2017年度の卒業公演も見てみましたが、最高学年になるとマイクの持ち方が皆んな素晴らしくなるという訳ではありません。逆に、麻生と新谷は中2の時も既にかなりのレベルだったことがわかりました。

2018年度のさくら学院で中3に続いてマイク姿が素晴らしいのは、やや意外にも森萌々穂で、その次に藤平華乃。さらには八木美樹と田中美空も筋の良さを感じさせます。普段の歌やダンスから受けている印象とは少し違うポテンシャルをメンバーの中に発見できたような気がして、なんだか嬉しくなりました。

そういえば、アクターズスクール広島では、小さい子供の頃から水を入れたペットボトルを使ってマイクを持つ練習を毎日させている、というような話を読んだ記憶があります。一流のパフォーマーになる上で、マイクの持ち方は結構重要なことなのだという気がしてきました。

最後に、私が今日観察した中での、マイクの持ち姿ベスト10を記しておきます。

1位:鞘師里保

2位:SU-METAL/中元すず香

3位:麻生真彩、新谷ゆづみ

5位:小田さくら

6位:日高麻鈴

7位:森萌々穂

8位:道重さゆみ

9位:藤平華乃

10位:八木美樹

 

続・鞘師里保が教えてくれること

先日の「鞘師里保が教えてくれること」の投稿は多くのかたに読んでいただけたようで、通常の25倍ものアクセス数があって大変驚きました。コメントやツイートもいただき感謝しています。ただ、想像ですが、モーニング娘。に対して乱暴な表現をしてしまった部分には、不快な気持ちを抱かれた人も少なからずいらしたものと思います。改めてお詫びをするとともに、その後自分がモー娘の動画漁りを更に続ける中で感じたことを今回書かせていただきます。

モー娘とベビメタとの違いは実に多くありますが、私が着目したのは楽曲の歌詞です。モー娘在籍時に鞘師が歌った代表的な(と思われる)曲をいくつか見てみましょう。

Only you

愛は不思議/強くなるの/私じゃない/私がいる/Ah 邪魔などさせない/愛の力/見せてあげる

One・Two・Three

愛情もっと/情報もっと/放任なんて/許さない/乙女はいつでもよしよししてほしい

Moonlight Night 〜月夜の晩だよ〜

月夜の晩だよ エビィバディ/Moonlight night Moonlight night/Hey 見てるもいいけど 騒ごよ/Moonlight night Moonlight night/ドレスをまとい/可憐に舞う/みんなごらんよ/私のセクシーダンスを

では、鞘師がモー娘で活動していた2011年から2015年頃にBABYMETALはどのような歌を歌っていたでしょうか。

イジメ、ダメ、ゼッタイ

イジメ(ダメ)イジメ(ダメ)/カッコわるいよ(ダメダメ ダメダメ)/傷ついて 傷つけて/傷だらけになるのさ/キツネ(飛べ)キツネ(飛べ)/きっと飛べるよ/苦しみも 悲しみも/全て解き放て/君を守るから

メギツネ

古の乙女たちよ かりそめの夢に踊る/幾千の時を超えて今を生きる/ああそうよ いつでも女は女優よ/キツネじゃない キツネじゃない 乙女なメギツネ/ああ ヤマトナデシク 女は変わるの/顔で笑って心で泣いて そうよねって涙は見せないの

ド・キ・ド・キ☆モーニング

知らないふりは嫌い嫌い/知らない世界見たい見たい/四次元五次元期待期待/テンパー背伸びしたいしたい よねっ/りんりんりん おはよう Wake up/お願いチョ待ってチョ待って/りんりんりん  焦らず Hurry up/バタバタモーニング

両者を比べてみて感じるのは、ベビメタの歌は外の世界に向けて意識を解き放つ感覚が強いのに対して、モー娘の歌は自分を見つめるミニマルな内容が多いことです。モー娘もベビメタも、メンバーは小中高校生の時期にこれらの楽曲を懸命に練習してきたのですから、彼女達のステージ上の姿に楽曲の性格が反映するのは当然です。

前の投稿で私は『初めてモー娘のステージをじっくり見て強烈に感じたのは、メンバーが「自分のために」演じているように見えることでした』と書きました。今の時点で思うのは、その印象が生まれたのはモー娘の楽曲群がメンバーに与えた影響によるものなのだろうということです。

さて、そこで鞘師里保です。私には彼女がモー娘の楽曲を超越しているように見える。鞘師里保が表現したい何かが未分化の形で彼女の中に存在していて、それをモー娘の楽曲という場を借りて放射していると感じるのです。

これは彼女が楽曲をないがしろにしているという意味ではありません。これまで見た鞘師里保の動画の中で最も感銘を受けたのが「キマグレ絶望アリガトウ」です。この曲は2012年6月に上演されたモー娘主演の舞台「ステーシーズ 少女再殺歌劇」の中で鞘師里保が歌ったもので、この舞台での歌唱も見ましたが、その3年半後の2015年12月にソロライブで歌ったものが鬼気迫るパフォーマンスで本当に凄い。もとの歌劇の世界観を十分に咀嚼した上で、どこか宇宙の彼方と交信しているようなのです。大きな器を得られればいくらでもスケールの大きな表現者になっていきそうな、豊かなポテンシャルを感じました。

楽曲を超越するパフォーマーといえば、我々にはもう一人知っている人がいます。そう、MIKIKO師に「曲に勝つダンスをする」「ぶっ飛び系」と評されたSU-METAL/中元すず香。もちろん歌のぶっ飛び具合でも伝説に事欠かない彼女ですが、私が受けたインパクトの度合いでは、2011年9月にアクターズスクール広島の発表会で歌った「オトシモノ」、2012年9月にさくら学院ららぽーと豊洲で初披露した「マシュマロ色の君と」が双璧だと思ってきました。ところがこの7月6, 7日に名古屋で彼女が歌った「Shining Star(仮)」を聴いて、改めてぶっ飛ばされました。ここまで声を張る必要があるのか、とも思うものの、この人はまだまだ大きく成長しそうだと実感させられたのでした。

楽曲を超越する二人。SU-METALと鞘師里保が今後どのような世界を見せてくれるのか、本当に楽しみになってきました。

 

バンドさん

絶賛を集めている今年6月28日以来のベビメタですが、その中で不満の声が多いのが神バンドの仮面ですね。今回は「今年の神バンドはなぜ仮面をつけなければならないのか」について考えてみます。

BABYMETALにおける神バンドの位置付けについては、かねてから背後に隠され過ぎではないかとの問題意識がファンの間で強かったと思います。しかもそれは運営に対しての不満だけではありません。かつてのインタビューで、3姫の誰であったかが神バンドを「バンドさん」という距離を持った表現で呼んでいたことが、結構な衝撃を持って受け止められたこともありました。

先月からの最新版BABYMETALは、「原点回帰」と呼ばれたり、あるいは漠然とした表現ではありますが「アイドル性が再び高まった」と感じさせるものがあるように思います。それと同時に神バンドが仮面をつけて現れたため、バンドの位置付けがかつての骨バンドのようになっていくのではないかとの論評も目にしました。

自分が愛するBABYMETALにおいて神バンドは必須なのか。昨年3月に投稿した「本質」と題するブログで私は次のように書きました。

『ベビメタの初期のようにバンドの音が録音の場合はどうなのか。生の方が良いのは間違いないですが、生バンドでなければ絶対ダメかというと、そうでもない気がします。音楽の質が高くさえあれば、形は二の次だと思うのです。』

自分がこう書いたことを思い出しながら、それでは今のBABYMETALのライブがバンドのカラオケ音源でも成り立つと自分は思うのかどうか、試してみることにしました。

まずは、公式音源が出ている最近の曲を改めて聴いてみます。Distortion、Starlight、Elevator Girl、そして PA PA YA!! … いやあ、これは … 生バンドでないと無理でしょう! エレガはカラオケでもなんとか行けそうな気がしますが、それ以外は絶対にダメ。

比較のために、2nd アルバムを一通り聴き直してみました。すると、Road of Resistance は厳しい気がするものの、それ以外はカラオケでも質の高いパフォーマンスができそうに感じます。クリックの拍子に合わせさえすれば(それ自体がとても難しいことなのでしょうが)、バンドの音とフロントの歌とダンスとがきっちりシンクロして高水準のライブパフォーマンスを実現できるように楽曲が作られているように思われます。

ところが昨年からリリースされた新曲群はかなり違う。フレーズ毎の微妙なタメ(こういうのをグルーヴというのでしょうか?)を、ステージのその場で共鳴し合って演奏・演舞しなければ、あの感動を呼び起こすことは到底できない。BABYMETALの楽曲はそのような音楽に変質・進化したのだと私は思います。

そんな風に徐々に感じながら、今度は横浜と名古屋の現場映像を見直していったのですが、そこで驚いたのがアルカディア(仮)!!  神バンドとフロント3人が渾然一体となってウネる姿のなんと凄まじいことでしょうか。実は正直なところ自分はアルカディアをあまり気に入っていなかったのですが、突如としてその真価を理解しました。これは本当に凄いです、特に名古屋!!!

さて、このように考えると、BABYMETALのフロント3人と神バンドとの関係は、今やかつてなく緊密になったと言えるはずです。それなのに、なぜ神バンドのメンバーは仮面を付け、その存在を背後に押し込んでいるのでしょうか?

ステージ上でのパフォーマンスがここまで緊密化している以上、普通の見せ方をしていれば3人+4人の姿は「全員がかけがえのないメンバー」として観衆の目に映るでしょう。しかし、フロントの3人目が未確定だとしている現状では、SU・MOAの二人とバンドの緊密化が先行するとバランスを欠いてしまいそうな気がします。フロント3人と神バンドは、同心円ではあっても一つの同じ円ではない。フロント3人を固めていくことをあくまで優先する必要があるのだと思います。また、神バンドのメンバーを常に固定することができないことも影響しているでしょう。

もはや完全に妄想ですが、神バンドの仮面は、フロントとの関係が深まったからこそ必要になった、というのが私の解釈です。

ここでふと思い出したことがあります。最近の anan での対談で SU-METAL がこんなことを話していました。「ライブの曲の話になると、色や絵とか、擬音で表現するんです」「いつの間にかセットリストが謎の絵にまみれてることはよくあるよね(笑)」「最近バンドメンバーとも絵をシェアするようになったけど…」

これを読んだ時は、SUが描いた謎の絵が見たい!、などと別の方に気を取られてしまったのですが、実はここにはとても重要な情報が含まれていたのでした。最近になってSUが楽曲のイメージを神バンドに対して発信し始めたこと。そして、「バンドさん」ではなく「バンドメンバー」と今は呼んでいること。これらから、ステージ上での楽曲表現に向けたメンバー間の関係性に重要な成長があることを読み取れると思うのです。

いやはや、いつもながらの妄言ですが、一つこれだけは確実に言えます。BABYMETALは神バンドとともに確実に進化している。そして、今後フロント3人が固まる日が来れば、同時に神バンドの姿が鮮明な形で現れてくるものと私は予想しています。

鞘師里保が教えてくれること

6月28日の横浜アリーナ以来、鞘師里保という人がどうしても気になって仕方がない自分がいます。現場で彼女を見たのは横浜と名古屋の2回。そしてグラストンベリーとブリクストンの映像を繰り返し見ました。更にはモーニング娘。(以下、モー娘)での加入から今年3月の出演までの映像もかなりの数を見てみました。その結果思うに至ったことを今回は書いてみます。

(なお、これから書く内容の中にはモー娘やハロプロのファンの方には不快感を与えてしまう部分があると思います。あらかじめお詫びいたします。)

私がモー娘時代の鞘師里保の映像を見て最初に思ったのは、彼女が明らかに異質な存在だということでした。ダンスが飛び抜けて上手いとか、強烈なオーラを放っているということもあるのですが、なんと言うか、「舞台上でパフォーマンスしている理由」が他のメンバーとは全然違うように見えたのです。

初めてモー娘のステージをじっくり見て強烈に感じたのは、メンバーが「自分のために」演じているように見えることでした。もちろん観客に喜んでもらおうとしてはいるのだけれど、それも「観客に喜ばれている自分の姿を見せるため」であるように見えてしまう。そうなると、メンバー間のライバル関係とか、誰がセンターを取るかといった、グループ内の「相対的なこと」についつい関心が行ってしまうのではないか、などと勝手な心配が湧いてきてしまいます。

ところが、鞘師里保だけが違っている。自分が120%の力で踊ることによって、自分と観客すべてを何か高次元にある世界に丸ごと連れて行こうとしているような、強い意志と使命感のようなものを感じます。鞘師里保はダンスを通じて異世界と交信する力を持っているかのようなのです。

いろいろと鞘師里保の動画を漁る中で最も印象に残ったのが、モー娘に加入する前のオーディションから2015年末に離れるまでのパフォーマンスを時系列で繋げた映像です。これを見ると、加入2年目に早くも堂々とした姿に成長し、2014年には最高の状態に達したように思います。ところが、2015年に入ると何かが違ってきてしまう。もちろん普通の基準で見れば十分に素晴らしいパフォーマンスではあるのですが、なんというか、先ほど書いた「異世界と交信する力」が弱まってしまい、その哀しみのようなものすら彼女の姿に感じられるのです。後付けでの感想にすぎませんが、彼女がその後舞台から離れる決断をしたことは必然の結果であったと思います。

さて、話をBABYMETALに移します。

BABYMETALのステージで踊る姿を見て、「鞘師があんなに楽しそうに踊るのを初めて見た」という彼女のファンのコメントがありました。初めてというレベルなのかどうか自分にはわかりませんが、彼女が心の底から楽しそうであることは見てわかります。それはなぜなのか。私にはそれが、モー娘での最盛期に感じていた意識が完全に蘇ったから、そして、同じ意識を持った仲間が2人(あるいは6人)もステージを共にしているからなのではないかと思うのです。

BABYMETALのステージには媚びが無い。媚びとは自分の私欲を満たすために自分の魅力を利用することでしょう。それとは真逆に、誰かの笑顔の理由になる、皆んなをもっと素晴らしい場所に連れて行く、自分達の音楽で世界を一つにする、そのために死力を尽くす。改めて考えると驚くべきことですが、BABYMETALはそのような俗世を超越したような価値観をずっと語り続けています。

ジャズピアニストの西山瞳さんがかつてブログに書いていた中に、BABYMETALの3人は「現代の巫女」だという表現がありました。初めて読んだ時は正直なところ意味がピンと来なかったのですが、今はわかるような気がします。持てる力のすべてを振り絞って歌い踊ることを通じて、人々と異世界をつなぐ媒介となること。鞘師里保がBABYMETALで見せてくれた姿によって、そのことを明確に理解することができた気がします。

鞘師里保さんありがとう。BABYMETALの何が素晴らしいのか、あなたのおかげでまた更に理解を深めることができました。今後どれだけその姿を目にできるかはOTFGKではありますが、次の機会を楽しみに待たせていただきます。