ベビメタ七転八倒

ベビメタのブログだったのに最近は鞘師多め

髪を直すということ

これはさくら学院での話だったか、その前の可憐Girl’sに遡る話だったか記憶が曖昧なのですが、「舞台でのパフォーマンス中に髪を直してはいけない。なぜなら髪を直すという振り付けは曲の中にないから」というMIKIKO師の教えがありました。これはBABYMETALにも綿々と受け継がれていて、彼女達のパフォーマンスが観る者をなぜこれほど感動させるのか、その本質を探る上での重要な鍵の一つとして捉えられてきたと思います。

最近のステージで印象的だった、というよりも衝撃的だったのは、サマソニ東京のステージでした。たしかヘドバンギャーだったと思うのですが、曲の途中でスクリーンに大写しになったSU-METALの顔全面を汗で濡れた髪が覆っているにもかかわらず、彼女は微動だにせず歌い続けるというシーンがありました。これには私の周囲からもどよめきが起こり、今年のBABYMETALに対する彼女の覚悟を象徴するような瞬間であったと思います。

さて、この数日はオーランドとアトランタのファンカムを片っ端から見続けており、そこで起きている洪水のような出来事を咀嚼するのに嬉しい悲鳴を上げています。その中で注目したことの一つが、この髪を直すことについてでした。

昨晩からアトランタの素晴らしく高音質高画質のファンカムがアップされ始め、あたかも自分も現場にいるような臨場感に浸っていたのですが、そこでふと目に止まったのが、曲中で髪を手で払う鞘師の姿です。それも一度だけではなく、おおよそ一曲に一回はそうする様子が映像に捉えられている。自分の知る限り、BABYMETALの9年の歴史で初めての出来事です。

これが米国ツアーが始まる前に起きたことであれば、自分は大きな違和感を感じたものと思います。実は、最近熱中している鞘師研究でモーニング娘。のライブ映像を多数見ている中で、どうしても気になるのがメンバーの多くがステージで歌いながら髪を手で払っていることでした。さくら学院〜BABYMETALの系譜とハロプロとの本質的な違いがそこに象徴的に表れているとさえ自分は思っていたのです。

しかし、アトランタの鞘師を見て自分は否定的な印象を受けませんでした。その理由は、今回の米国ツアーにおいてBABYMETALは重要な飛躍を見せていると自分が考えていることと関係しています。

Twitterでも呟きましたが、今回の神バンド総入れ替えについて、私は全面的に肯定的に受け止めています。その理由は、演奏の水準が十二分に高いことに加えて、新体制がこれまでのBABYMETALとは不連続な世界を見せてくれていることにあります。

2013年2月の Legend “Z” から6年半もの長きにわたり、大村、Leda、青山、BOH、藤岡の各氏を中心とした神バンドは、フロント3人の成長と歩調を合わせながら、その演奏を進化させてきました。その一つの到達点が2017年12月の Legend S であり、最新が最高という意味において今年8月のサマソニであり、そして更に今後も進化していくものと思います。

この神バンドの素晴らしさについてはここで改めて語る必要などまったくありません。ただ、その上で敢えて言うのですが、そのあまりの緻密な完璧さのために、どうしても予定調和的な感じが微かに漂ってくる。BABYMETALのステージは、ライブと呼ぶよりもショーと表現する方がしっくりする。そんな印象をこのところ持っていました。

ところが、そこに現れ出たのがオーランドでの新体制です。初顔合わせであるがための緊張感やぎこちなさを差し引いたとしても、なんとも(良い意味で)不穏な、ステージ上でのパフォーマンスに予断を許さないようなエネルギーが湧き出ている。その変化をフロント3人は当然に感じ取り、2日後のアトランタにつながっていったのではないかと思います。

アトランタで最初に気付いたのは鞘師が髪に手をやる姿ですが、SU-METALも最近の「完璧さ」の殻を敢えて破っているように見えるし、MOAの弾け具合もこれまでを上回っている。これはもう、あらかじめ計算されたショーなどではなく、全力を尽くした先に何があるか本人達もわからない、究極のライブパフォーマンスに進化したものだと思うのです。

アトランタのステージ上で髪を手で払う鞘師を見ても違和感を感じなかった理由。それはステージパフォーマンス全体のこうした進化によるものでした。次の瞬間に全力で挑むためであれば、髪を直そうが直すまいが構わない。それだけ高次元の世界を我々は目撃し始めているのだと私は考えています。