ベビメタ七転八倒

ベビメタのブログだったのに最近は鞘師多め

鞘師里保の歌唱はリズムセクションである①

この自粛期間に集中できたこともあり、私のハロプロ研究がかなり進んできました。ハマった順で言うと、Buono!、BEYOOOOONDS、モーニング娘。、Juice=Juice、そして一番最近ではアンジュルム。聴いた曲の数もかなりの量になってきましたが、そんなこの頃感じているのがモーニングの楽曲には不思議な中毒性があるなあということです。

この10年くらいのモーニングの楽曲に見られる大きな特徴と言えば、EDM的な曲作りが真っ先に挙げられるものと思います。でも、EDM的であればモーニング的なのかというとそうでもありません。例えばアンジュルムの『泣けないぜ・・・共感詐欺』(2018年5月リリース)は、バックのインストはモーニング曲だと言われてもまったく違和感がないし、イントロで「泣けないぜ」が繰り返される部分もモーニングっぽい。ところがAメロに入った瞬間にモーニングの世界から大きく離れていきます。

比較のために、同じ時期にリリースされたモーニングの『Are You Happy?』(2018年6月)を聴いてみると、一聴して気付くのがその特徴的な歌い方で、フレーズ単位どころか単語単位ですらなく、音節の単位で歌詞を自在に分解して発声していることです。

たとえば冒頭のAメロは「愛の貯金なんて出来ないよ、今日は今日の、こないだのサプライズなら、リアクションしたでしょね」という歌詞ですが、実際の歌い方は「愛の 貯金 なんて 出来な いよ、きょ う は きょ う の、こない だの サ プライズ なら、リ アクション した で しょ ね」とブツ切りになっていて、その一つひとつにアクセントが付いています。歌詞を聴かせるよりもビートを利かせることを優先しているのでしょう。また、そもそも歌詞が文の形を成しておらず、言葉の前後の脈絡を重視していないこともわかります。

一方、『泣けないぜ・・・共感詐欺』のAメロでは、「涙が出ちゃう話題の映画で、ちっとも震えなかった涙腺、世の中変じゃん?まさか言えない、心が乾いてひび割れそう」という一つのまとまったストーリーが歌い上げられていて、言葉でしっかりと情景を伝えることに重きが置かれているのがわかります。

このようなモーニング特有の歌い方に着目しながらモーニングの楽曲(CD音源)を時間軸に沿って聴き込むことによって、このグループにまつわる色々なことが見えてきた気がしています。前置きが長くなりましたが、今回はそのことについて書いていきます。

1. プラチナ期の終わり

モーニングの楽曲にEDM的な要素が入ってきたのがいつからなのかはまだ勉強不足でわからないのですが、ゴリゴリにエレクトロな最初の楽曲は『Fantasy が始まる』(2010年12月)でしょうか。その半年後には『Only you』(2011年6月)が出て、その後に続く楽曲の路線が確立された感があります。

ただ、歌唱に関しては、長いフレーズを朗々と歌い上げるプラチナ期のスタイルが続いています。この時期は高橋愛新垣里沙田中れいなという3枚看板がいて、楽曲もこの3人を活かすように作られたのでしょう。インストは縦に強くビートを刻んでいますが、歌唱のメロディは横に長く取られていて、(私のような新参者が言うのはなんですが)ザ・プラチナ期という感じがします。

ところが、この流れに重要な変化が加わったのが『恋愛ハンター』(2012年4月)です。新垣里沙田中れいな鞘師里保の3人が歌唱でフィーチャーされている中で、私には新垣里沙だけが浮いて聴こえてしまうのですが、そこには楽曲が求める歌い方の変化があると思うのです。

この曲で求められているのは硬質で鋭角的な歌唱であり、拍の瞬間に瞬時に声が立ち上がって音の終わりも明確にスパッと切る。長い音符を伸ばす中で陰影やビブラートを付けるプラチナ期型の歌唱とは大きく違います。器用な田中れいなは、それまでの自分の歌唱の持ち味を残しながら新たな要求に合わせることができた。一方、新垣里沙はこのシングルを最後に卒業し、ここで楽曲とその演奏の面においてプラチナ期は終わりを告げたと言えるのではないでしょうか。

(だいぶ長くなりましたので、ここで一旦区切ります。次回は問題作『One・Two・Three』から話を続けます。)