ベビメタ七転八倒

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今さらですが、EDMとは? ②

前回の投稿(「今さらですが、EDMとは? ①」)では、ハロプロの楽曲で聴かれるいわゆるEDM的な音はユーロビートとハードスタイルの2つのジャンルから来ていること、そして、ハードスタイルの音が鳴っている楽曲には「(A)ハードスタイルと共通の音がインストに使われている楽曲」と「(B)ボーカルを含めた曲全体の構造がハードスタイル的に組み立てられている楽曲」の2種類があるということを書きました。

今回からは、モーニング娘。の歴史の中で、初めてEDM的な音が使われ始めた時から (A)の楽曲スタイルが確立されていく様子を辿っていこうと思います。

 

1. 黎明期:EDM音の浮上

 

モーニング楽曲の中にデジタルな打ち込み音が入り始めたのがいつ頃かは追いきれていないのですが、EDM音がはっきり強調されるようになった最初のシングル曲は、2003年11月リリースのGo Girl 〜恋のヴィクトリー〜(編曲:鈴木Daichi秀行)ではないでしょうか。

曲全体に流れるピコピコしたシンセ音がユーロビート的な軽快さで、Bメロ(MVの1分07秒から)に入ると低音ビートの4拍頭打ちがハードスタイル風味を効かせています。プラチナ期以降の楽曲に耳が慣れているといたって普通の音に聴こえますが、デビュー当初から発表順に曲を聴いてくると、この曲に来てハッとします。

以前の投稿(「モーニング楽曲のBPM全史①」)の中で、モーニング楽曲の速度(BPM)は2003年11月頃から速い曲と遅い曲にくっきり分かれ始めたと書きました。『Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜』はその中の”速い曲”第1号にあたります。この時期のモーニングは6期が加入して間もない15人体制。大人数グループの溌剌としたエネルギーを表現するのに高スピードとEDM音が選択されたのかもしれませんね。

(この楽曲がA面に入ったシングルアルバムのカップリング曲が、いま映画「あの頃。」で注目を集めている『恋ING』でした。映画のはじめの方にCDショップのシーンがありましたが、その店内に『Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜』のポスターがしっかり掲示されていて、ああこういう時代の曲だったのだなと感じ入りました…)

 

さて、この曲に続いてモーニングの楽曲が一気にEDMに向かったかというと、そうではありませんでした。次に現れたEDM音が目立つ楽曲は、2年半後の2006年6月にリリースされたAmbitious! 野心的でいいじゃん(編曲:湯浅公一)です。

ロックサウンドにEDMの低音ビートが合わさり、その上にストリングス音が乗って、疾走感と重さが同居した聴き心地の良いインストですね。

 

その5ヶ月後、モーニングのEDM史で重要な位置を占める(と私が勝手に思っている)楽曲が登場します。それは、2006年11月リリースの踊れ!モーニングカレー(編曲:平田祥一郎)。カップリング曲のため残念ながらMVが無いので、昨年の”踊ってみた”動画を貼っておきます。

編曲者の平田祥一郎は膨大な数のハロプロ楽曲に携わっている人ですが、モーニングのシングル曲を編曲したのは『踊れ!モーニングカレー』が初めてでした。曲の表面で踊るように流れるインド風(?)の音の下で、EDMの低音がしっかり鳴っています。しかも、この低音部は非常にシンプルでありながら、ビートを刻む役割と同時にユーロビート的な軽快さも表現していて、かなり入念に工夫された音だと思います。

後に『しょうがない 夢追い人』『恋愛ハンター』『ENDLESS SKY』『Are You Happy?』『LOVEぺディア』『純情エビデンス』などを送り出すことになる平田祥一郎ですが、さすが ”栴檀は双葉より芳し”。色物(?)な楽曲でも鮮やかな音作りに成功したことが、その後の展開につながったのではないかと勝手に想像しています。

平田祥一郎が参加し始めた最初期から2006年までのハロプロ楽曲の中で、『踊れ!モーニングカレー』につながっていくビートを感じられる曲を選んでプレイリストを作ってみました。下の方に書いておきますので、よろしければご覧ください。)

 

時計の針を進めます。翌2007年の4月にリリースされた『Hand made CITY』(編曲:鈴木Daichi秀行)では、ロックギターがバリバリ鳴りながらユーロビートが合体されています。『Ambitious! 野心的でいいじゃん』の前へ進む疾走感とは少し違う、縦ノリを強調した楽曲ですね。この曲もMVが無いので、インストが聴こえづらいですが 2010年秋ツアーの公式動画を貼っておきます。

 

2007年にはもう1曲、7月に女に 幸あれ(編曲:江上浩太郎)が出ました。前回の投稿(「今さらですが、EDMとは?①」)で紹介したように、インストはユーロビート一色でできあがっています。これまで紹介した楽曲のインストはEDM音と他ジャンルの音が重ね合わされた形でしたので、ここまでEDM音を徹底したのはこれが初めてでしょう。



さて、このあと翌2008年の終わりまでEDM音は影を潜めます。と言うより、2008年は楽曲リリース自体が少ない年でした。そして2009年、モーニングのEDMは大きな展開を見せることになります。その話は次回の投稿で…

 

【おまけ】

踊れ!モーニングカレー』をアレンジした平田祥一郎がそれまでに編曲していたハロプロ楽曲の中から、曲調が近いものを10曲リストアップしてみました。名付けて「The Road to モーニングカレー」。リリース時期の順に並べています。

1. 後藤真希『長電話』(2003年6月)

2. カントリー娘。に紺野と藤本『先輩 〜LOVE AGAIN〜』(2003年11月)

3. ZYX白いTOKYO』(2003年12月)

4. Berryz工房恋の呪縛』(2004年11月)

5. 後藤真希エキゾなDISCO』(2005年2月)

6. W『デコボコセブンティーン』(2005年3月)

7. Berryz工房『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』(2005年6月)

8. DEF.DIVA好きすぎて バカみたい』(2005年10月)

9. 美勇伝愛〜スイートルーム〜』(2005年10月)

10. 後藤真希ガラスのパンプス』(2006年6月)