ベビメタ七転八倒

ベビメタのブログだったのに最近は鞘師多め

世界レベルで戦うということ

PMC Vol.13 の SU-METAL のインタビューを繰り返し熟読しています。読むだけではなく、自分の手を使って書き取ってみると更に気づくことがある。奥深い素晴らしい内容です。

前半でまず目を引いたのは次の箇所でした。

『今回のツアーを回る中で、ファンの方はYUIMETALがいないっていう状況に対してすごく動揺していただろうし、私たちも1公演1公演がんばらなきゃっていう思いがありました。でも、自分としては100%の力を出していたつもりなんですけど、正直、それが届いていないんじゃないかっていう思いがツアー初日のカンザスシティでのコンサートのときにあって。「ワンマンライブなのに怖い」という印象を抱いたのはこれが初めてでした。』

カンザスシティのライブの現場に自分は残念ながらいませんでした。あの日、次々と上がってくる映像を見て私は当惑し、どう反応して良いかわからなかったというのが正直なところです。それが、2箇所目のオースチンで大きく印象が変わり、その後ステージを重ねるごとにパフォーマンスの素晴らしさが増していったとリアルタイムでは感じていました。

ところが、暫く経ってカンザスシティの映像を見直してみたら、この初日からステージ上のパフォーマンスは十分素晴らしいものだった言わざるを得ないことがわかったのです。このことは以前の投稿で書きました。

今回改めてカンザスシティのファンカムを見直してみました。SU-METALの発言に、自分の力がファンに届いていないんじゃないかという言葉があったので、今回は観客の反応にも注目しました。それで見て取れたのは、他のライブと比較して反応が悪いとは全然感じられない、むしろ十分に盛り上がっているとしか見えないのです。

自分は現場にいなかったので想像を逞しくするでしか語ることができないのですが、BABYMETALのメンバーがライブで実現しなければいけないと考えているレベルが、物凄く高い水準にあるのではないか。それは、これまでほぼすべてのステージでそれを実現してきたために、それが当たり前になっているということでもあるのでしょう。

しかも驚くべきことに、自分達が満足できない(それでもかなり水準が高い)ときにどうするかがわかっていると述べているのです。

『私たちはいつもそういう[かなり追い込まれた]状況に置かれているし(笑)、しかも毎回ちゃんと乗り越えてきたから、どんなに大変でも自分たちならできるって。だからこのツアー中も「どうやったらできるんだろう」って乗り越える方法を模索していました。困難の先にあるゴールはこれまでも見たことはあるし、ゴールに到達したときに得る快感がどんなものかもわかっていたから、あとはそこにたどり着くためにがんばるっていう感じでしたね。』

何という自信と責任感でしょうか。

そこまで自分達を追い詰める必要があるのか、でも、そこまで追い詰めているからこそ実現できる世界がある。

そして、自分を追い詰めているという点で更に追い討ちをかけているのが、インタビューの始めの方でさらっと語られているこの発言です。

『私のなかでは、どういう状況であっても毎回のライブは絶対に言い訳ができないものだと思って臨んでいるんです。』

今回のインタビューを何度も読み返していて、最も核心的な言葉は冒頭のこれだと思うに至りました。

SU-METAL がなぜそう考えるようになったのか、幼い頃に指導者から言われたからなのか、その辺りの経緯はわかりません。ただ、BABYMETALのステージが持つ緊迫感、そして開演を待つ観客の間にみなぎる緊張感の根底には、彼女のこの意識があるのだと思うのです。

BABYMETALのライブは、音楽を楽しむというよりも、オリンピックの体操競技フィギュアスケートのファイナルを見ている感覚に近い。一発勝負で受け手の主観に満点を付けさせることを自分の責務として引き受ける潔さ。世界の第一線で戦うとはこういうことなのかと感じ入ることしか自分にはできません。

そんな SU-METAL がインタビューの最後で述べている、今年6月のライブに臨む言葉がこれです。

『お客さんにも覚悟してもらいたいし、私たちとしても自分たちの覚悟を見せられたらなって思います。』

他のバンドが景気づけにファンに向かって「覚悟してろよ!」と言い放つのとはまったく違う、SU-METAL が静かに口にする「覚悟」という言葉のなんと重いことでしょうか。

横浜公演まであと約1カ月。それまでの間、覚悟とは何を意味するのかをじっくり考えておきたいと思います。