ベビメタ七転八倒

ベビメタのブログだったのに最近は鞘師多め

音楽を牽引する力

前回の投稿を書きながら改めて思い起こしたことがありました。それは、プロの音楽家の間でも「音楽を奏でる力」とでもいうような能力が、人によって大きく違うということです。自分のバックグラウンドがクラシック系の音楽なので、今回はそちらの話が多くなると思います。

クラシックには協奏曲というジャンルがあり、例えばバイオリン協奏曲だと、ソロのバイオリン奏者ひとりで数十人のオーケストラと対峙して演奏することになります。バイオリンはそれほど音量が大きい楽器ではありません。オーケストラ側が音量を抑えめにしたとしても、普通に弾いているだけでは音が埋没してしまいがちです。そのため独奏者は、音程をわずかに上げて演奏するなどの工夫をすることになります。

ところが、バイオリニストの中には、音量の大きさではなく、身体の中から湧き上がる音楽の発信力でオーケストラ全体をいとも簡単に凌駕してしまう人がいます。私がコンサート会場で実際に体験した中では、五嶋みどり神尾真由子。また、映像でしか見たことがありませんが、ギドン・クレーメルやレオニダス・カヴァコスといった人達もその部類だと思います。

こういったソリストと出会ったオーケストラ団員は、最初のリハーサルで最初の一音を聴いた瞬間に悟るはずです。今回は段違いに凄い奴が来たと。その瞬間からオーケストラは、ソリストが牽引して描き出す世界観を具現化し、増幅する役割に集中していく。そのようにして名演奏が生み出される。自分はそのように考えています。

さて、それがベビメタとどう関係があるのでしょうか。

BABYMETALとはフロントの3人だけなのかバンドと合わせた7人(あるいは8人)なのか、神バンドにリーダーはいるのか、といった問いが常にあります。これらは突き詰めると、あの筆舌に尽くしがたく素晴らしいベビメタのステージを生み出している中核は何なのか、という疑問に至ります。これをステージの外に求めると、前回書いたような manufactured という表現が出てきます。しかし、ベビメタのステージがライブパフォーマンスである以上、演奏の核心はステージ上にあるはずです。そして、その核心はやはり SU-METAL だと思うのです。

BOH神がかつて投稿した有名なブログがありますね。SU-METALさん、YUIMETALさん、MOAMETALさんの3人を自分は尊敬してやまない、という。これを読んだ時に自分はなんとなく、3姫の頑張りといった精神面の強さのことを言っているものと受け取っていました。それは勿論あるはずですが、今思うと、BOH神の記述には、それに加えて純粋に音楽を演奏する者としての尊敬が込められていたのではないかと感じるのです。

BABYMETALが世界トップクラスのアーティスト達の注目を集め始めた2013年、SU-METALは弱冠15歳でした。でも「音楽を奏でる力」に年齢や経験は関係ありません。若くても、初心者でも、凄い人は凄い。時期は下りますが、レッチリやコーンのメンバーがなぜ嬉々としてバックバンドで共演するのか、ロブ・ハルフォードがなぜ対等の立場でSU-METALとボーカルを競い合うのか。それは、自分達と同等(あるいはそれ以上)の力を持つアーティストと音楽をできる喜びがあるからでしょう。

観客としてベビメタのライブの現場に行っても、SU-METALのそのような力を感じ取ることは難しい。とにかくあの爆音だし、照明効果も目まぐるしいですので。しかし、7人の意識の糸はおそらく緊密につながっていて、その中心で全体を牽引し、支えているのはSU-METALその人なのではないでしょうか。いつの日か、関係者の証言を聞いてみたいものです。