ベビメタ七転八倒

ベビメタのブログだったのに最近は鞘師多め

鞘師里保が教えてくれること

6月28日の横浜アリーナ以来、鞘師里保という人がどうしても気になって仕方がない自分がいます。現場で彼女を見たのは横浜と名古屋の2回。そしてグラストンベリーとブリクストンの映像を繰り返し見ました。更にはモーニング娘。(以下、モー娘)での加入から今年3月の出演までの映像もかなりの数を見てみました。その結果思うに至ったことを今回は書いてみます。

(なお、これから書く内容の中にはモー娘やハロプロのファンの方には不快感を与えてしまう部分があると思います。あらかじめお詫びいたします。)

私がモー娘時代の鞘師里保の映像を見て最初に思ったのは、彼女が明らかに異質な存在だということでした。ダンスが飛び抜けて上手いとか、強烈なオーラを放っているということもあるのですが、なんと言うか、「舞台上でパフォーマンスしている理由」が他のメンバーとは全然違うように見えたのです。

初めてモー娘のステージをじっくり見て強烈に感じたのは、メンバーが「自分のために」演じているように見えることでした。もちろん観客に喜んでもらおうとしてはいるのだけれど、それも「観客に喜ばれている自分の姿を見せるため」であるように見えてしまう。そうなると、メンバー間のライバル関係とか、誰がセンターを取るかといった、グループ内の「相対的なこと」についつい関心が行ってしまうのではないか、などと勝手な心配が湧いてきてしまいます。

ところが、鞘師里保だけが違っている。自分が120%の力で踊ることによって、自分と観客すべてを何か高次元にある世界に丸ごと連れて行こうとしているような、強い意志と使命感のようなものを感じます。鞘師里保はダンスを通じて異世界と交信する力を持っているかのようなのです。

いろいろと鞘師里保の動画を漁る中で最も印象に残ったのが、モー娘に加入する前のオーディションから2015年末に離れるまでのパフォーマンスを時系列で繋げた映像です。これを見ると、加入2年目に早くも堂々とした姿に成長し、2014年には最高の状態に達したように思います。ところが、2015年に入ると何かが違ってきてしまう。もちろん普通の基準で見れば十分に素晴らしいパフォーマンスではあるのですが、なんというか、先ほど書いた「異世界と交信する力」が弱まってしまい、その哀しみのようなものすら彼女の姿に感じられるのです。後付けでの感想にすぎませんが、彼女がその後舞台から離れる決断をしたことは必然の結果であったと思います。

さて、話をBABYMETALに移します。

BABYMETALのステージで踊る姿を見て、「鞘師があんなに楽しそうに踊るのを初めて見た」という彼女のファンのコメントがありました。初めてというレベルなのかどうか自分にはわかりませんが、彼女が心の底から楽しそうであることは見てわかります。それはなぜなのか。私にはそれが、モー娘での最盛期に感じていた意識が完全に蘇ったから、そして、同じ意識を持った仲間が2人(あるいは6人)もステージを共にしているからなのではないかと思うのです。

BABYMETALのステージには媚びが無い。媚びとは自分の私欲を満たすために自分の魅力を利用することでしょう。それとは真逆に、誰かの笑顔の理由になる、皆んなをもっと素晴らしい場所に連れて行く、自分達の音楽で世界を一つにする、そのために死力を尽くす。改めて考えると驚くべきことですが、BABYMETALはそのような俗世を超越したような価値観をずっと語り続けています。

ジャズピアニストの西山瞳さんがかつてブログに書いていた中に、BABYMETALの3人は「現代の巫女」だという表現がありました。初めて読んだ時は正直なところ意味がピンと来なかったのですが、今はわかるような気がします。持てる力のすべてを振り絞って歌い踊ることを通じて、人々と異世界をつなぐ媒介となること。鞘師里保がBABYMETALで見せてくれた姿によって、そのことを明確に理解することができた気がします。

鞘師里保さんありがとう。BABYMETALの何が素晴らしいのか、あなたのおかげでまた更に理解を深めることができました。今後どれだけその姿を目にできるかはOTFGKではありますが、次の機会を楽しみに待たせていただきます。