ベビメタ七転八倒

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『純情エビデンス』とプラチナ期楽曲

モーニング娘。'20 の新曲『純情エビデンス』のMVが公開され、自分も昨晩から数えきれないくらい再生して聴き込んでいます。

あちこちに上がっている感想を読むと結構出ているのが「最初はなんかあっさりした印象だったけど、何度か聴くうちに味わいが出てくるスルメ曲だった」という声ですね。自分の第一印象も同じで、いつものバスドラム強めのEDMの上に軽い歌が乗っているなあという印象でした。でも、聴き込んでいくと緻密に作り込まれた細部がどんどん見えてきて、何度聴いても聴き飽きないという感想に変わっていったのでした。

この「あっさりした歌」という第一印象がどうして生まれたのだろうかと考えながらリピートを続けていく中で、一つ気づいたことがありました。それは『純情エビデンス』の歌が基本的に8ビートでできているということです。要所要所で2拍三連符が使われていたりしているのでロック調の硬い8ビートではありませんが、16分音符で刻むところはほとんどなく、ほぼ表拍と裏拍だけで歌が構成されています。

一方、インストの方はいつもと同様、モーニング楽曲の代名詞とも言える16ビートのEDMがしっかり鳴っています。『純情エビデンス』を大きく特徴づけているのは、16ビートのEDMの上に8ビートの歌が乗っているという構造なのではないかという気がしてきました。

実は、自分はこの数ヶ月間、モーニング娘。がスタートした1998年から現在までに楽曲がどう変化してきたのか、膨大な数の曲がある中でその全体の流れをつかもうという無謀な挑戦をしています。その探究の中で最近はプラチナ期の楽曲を集中して聴いているのですが、そこで次のようなことがわかってきました。(間違っていたらごめんなさい。)

ハロプロは16ビート重視と言われているが、モーニングの楽曲で16ビートが前面に出てくるのはプラチナ期が始まる直前の2007年初め頃から(『笑顔YESヌード』あたりからか?)。

・16ビートが前面に出てきたといってもそれは主にインストのビートであり、プラチナ期楽曲の歌は8ビートで作られているものが多かった。

・インストにEDM色が入り始めるのはプラチナ期中盤の2009年中頃から。

このように見てみると、『純情エビデンス』の「16ビートのEDMに8ビートの歌が乗っている」という形は、プラチナ期中盤〜終盤の楽曲と似ている可能性がありそうです。

そういう観点でプラチナ期楽曲を端から聴いてみたのですが、そこで見つけた『純情エビデンス』に似た形の曲を、新しいものから順に挙げてみます。

『Give me 愛』(2011年11月リリース)

『Fantasy が始まる』(2010年12月リリース)

『愛され過ぎることはないのよ』(2010年11月リリース)

『しょうがない夢追い人』(2009年5月リリース)

中でも最後に挙げた『しょうがない夢追い人』は、調が『純情エビデンス』と同じで速度も近いので、とても似た印象を受けます(ぜひ聴き比べてみてください!)。

さらに、『しょうがない夢追い人』はモーニングで初めて明確にEDM色のあるインストが現れた楽曲でもあるようです。なんだかプラチナ期中盤のこの楽曲が、11年半の長い紆余曲折を経て『純情エビデンス』になって帰ってきたような感慨を覚えてしまいました。

ただ、楽曲の構造が似ているといっても、歌の歌い方は大きく異なります。プラチナ期の歌唱は横にたっぷりと音を繋いで歌い上げるスタイルですが、『純情エビデンス』の歌唱は縦に鋭く拍を刻む『One・Two・Three』以降に培われたモーニング特有のスタイルが貫かれています。もし『純情エビデンス』を高橋愛新垣里沙田中れいなの3人が歌ったら、プラチナ期楽曲そのものに聴こえるのではないでしょうか。

このように掘り下げてみると、『純情エビデンス』はプラチナ期から現在に至るモーニング楽曲の総決算であるようにも感じてきます。ここからさらにモーニング楽曲はどこへ向かうのか。『ギューされたいだけなのに』には何かヒントが含まれているのでしょうか・・・。